…お父さん、お父さん、みぃはどうなっちゃったの?
私、見たのよ。ううん、一緒に遊んでたみんなが見てた。
みぃの目が青くなったの。それで、なんか髪がふわっとしたの。
それからみぃが倒れちゃって、それからみぃが目をさまさないの。

『…よく聞いて、しぃ。大事な話だ。
お前たちは二人とも、不思議な力を持って生まれてきたんだよ。時間の神様と同じ、神秘的な力だ。
みぃは今日、その力が出てきて倒れてしまっただけ。すぐに目が覚めるよ。
だけどね、しぃ。この力が他の人に見つかると、怖い人達に捕まってしまうんだ。
…大丈夫だよ、しぃ。泣くんじゃない。
みぃのことは、お父さん達が全力で守る。
だからね、しぃ。しぃは自分のことを守りなさい。
しぃはとても賢いから、ちゃんと秘密を守れるし、いざとなったら戦えるはずだ。

いいかい、しぃ。自分のことを守るんだよ。

みぃもしぃも居てくれることが、お父さん達の幸せなんだよ。』





『…しぃ姉。』

『あ…みぃ、目が覚めた?』
『うん、まだちょっとふらふらするけど…。』
『そっか…えと、みぃは風邪引いちゃったんだって。』
『そっかぁ。じゃあ今日はお休みするね。』
『そうだね。なにか食べたいものある?』
『うーんと…あ、りんごが食べたいな。』
『りんごだね、わかった。じゃあ私、森に行って取ってくるよ。』
『ほんと?わぁ、ありがとう!』

『じゃあ…いってらっしゃい、シズハ。』
『うん、行ってくるね。ミズハ。』






本当の名前なんてなんの意味があるだろう。
今生きている自分にすら、意味を見出すことができないのに。
故に少女は、男は、今は亡き名前を背負う。
死の棘を心臓に突き刺しながら、それでも二人は生きていく。



a survivor

          
―  生 き 残 っ た 者 ―


生きるとは、逝きし日まで疾ること。



fin.