「チロ姉っ!」
声とともに背中に飛びつく、ふっかふかのポンチョ。
「えっ、あらま!テリアちゃんじゃないのー!今日は一体どうしたn」
「チロ姉チロ姉!こっちきてきて、こっちなのっス!」
あいさつもそこそこに、手を引かれて走り出した。


聞いてよフタギ。アタシ恋人できちゃった。それもとびっきり可愛い子よ。
バカ真面目なアンタだから「また同性なのか、君もいい歳の女性なんだから遊んでないで将来を真剣に考えろ」なんて言うんでしょうけど。
ほんとーにバカ真面目ねぇ。将来とか細々考えてたらハゲちゃうわよ。人生やっぱ恋に遊びに楽しまなくちゃ。
今度紹介してあげる。きっとアンタも驚くわよ。びっくりするほど可愛いんだから。

でもねぇ、なんだか今回はそれだけじゃないみたいなの。
こうしてひっぱってく力も結構強くて、ぐいぐい引っ張られてっちゃう。アタシ恋人はリードするタイプなのよ?でも不思議とイヤじゃないの。
どこに行く気なの、って聞いても聞こえてないくせに、
時々ちらっと振り向くまんまるおめめは、まっすぐアタシを映してる。
細っこいのに力強い手はしっかりアタシだけを掴んでるし、
可愛いふわふわポンチョの後姿はアタシだけを導いてくれる。

ひたすらまっすぐ、まっすぐにぶつけてくれる愛情。
それに気づいた時に、この子はただの『可愛い子』じゃなくなっちゃったの。
なんて呼べばいいのかしらね、これ。今までの恋とはなにか、なにか違うのよ。


「着いた着いた!よかったー間に合ったっスー!」
草原を駆け抜けて着いたのは、ちょっぴり小高い丘の上。草を揺らす風はほんのり涼しくて、いつのまにか夕方になってたことを今更知った。
結構遠いとこまできたみたい。止まった時に思わず、息が荒くなった。
「はぁ…テリアちゃん速すぎるわよぉ。」
「えへへ、ごめんなのっス。でもどーしてもチロ姉に見てほしくって。」
ぴっと、テリアちゃんが上を指さす。つられて上を見て、はっとした。

夕暮れの上に藍色を注ぎ込んだ、グラデーションの空色で。
ちょうどアタシ達を囲むように、星が瞬いていた。

「…綺麗…。」
「ホント?チロ姉も綺麗だって思う?」
こっくりと頷いた。プラネタリウムみたいで、とっても綺麗。プラネタリウムだってこんな綺麗な星空作れないわ。
「こないだ見つけた場所なのっス。夜も綺麗だけど、夕暮れのこの時間、すっごい綺麗で、もうすっごく嬉しくって。」
眩しい笑顔が、まっすぐアタシに。
「やっぱいっちばん最初に、チロ姉に教えなきゃだめっス、絶対!」

どっくんと鳴った心臓、どうか聞こえませんように。
可愛い笑顔なのに。年下のあどけない笑顔なのに。もう。もう。やんなっちゃうわ。
「…嬉しいわねぇホント。ありがと、テリアちゃん。」
「あーダメっスよチロ姉!テリアって呼んでくれる約束ー!」
今度は真剣な顔して両手を掴んでくる。笑ったり真剣だったり忙しすぎるわよアナタ。
…実はちょっと気恥ずかしかったんだけど、アナタのおめめには敵わないわ。


「ならアタシのことも、チロルって呼んで頂戴?」




スターライン


(誰より一番、眩しいアナタ。)

fin.