ふと気がついたら、あたしはひとりだった。


今まで当たり前だと思っていた景色が、急に不思議に見えた。
なにもない場所。変わらない場所。限りない場所。そこにあたしひとりがじっとして過ごす。
動きたい、と思った。じっとしてるのをやめて動いてみた。すぐつまらなくなった。
だって此処はなにもないんだもの。
だからあたしは考えた。

此処をたのしい場所にしましょう。

早速あたしは作り始めた。
あたしの姿に似せた新しい子を。あなたには時間をあげましょう。変わらない場所が、変わっていく場所になるように。
新しい子の対になる子を。あなたには空間をあげましょう。限りない場所が、限りある場所になるように。
二人の力を借りて、まっさらな星をひとつ作った。これがあたしたちの新しい場所。作った二人を住まわせて、他にもどんどん友達を作る。
陸の力を持つ子、海の力を持つ子、空の力を持つ子、雷の力、火の力、氷の力、虹の力、花の力。
みんな一生懸命仕事をしてくれた。だんだん星がにぎやかになっていく。
みんないつまでもにぎやかだから、夜を作った。あなたには闇をあげましょう。みんながよく眠れますように。
そして月を作った。あなたには月の光をあげましょう。
眠れない時も、さみしくないように。





あれから随分年月が経って
あたしはあたしの星を見下ろしていた。

にぎやかだった星はとても静かになっていた。地面がとっても冷たい。空も黒い。感じるのは、夜の子にあげた力ばかりだった。
あそこにいるのは時間の子ね。
時間の子は、あたしよりもうんと頭がよくて、あたしが考えもしなかったルールを一生懸命守って生きた。
そして今。
時間の子は、ルールを守って消えようとしていた。

傍には別の子も倒れていた。緑の子、黒い子、ピンクの子。
きっとあたしたちが作った星から生まれてきた子たちなんだろう。その子たちもルールを守って消えようとしていた。
あたしはひとりだったから、あたしがどこから生まれてきたのか知らない。あたしを生んでくれた人も知らない。
でもあたしはこの星に教えてもらった。
"お母さん"、という人。生んだ子をどんなに辛くても苦しくても守りたいと願う人。

今あたしが泣いているのは、そういうことなのかな。
この星は、この星の子はみんな、あたしの子。


ごめんね、ディアルガ。

あたしはルールを、破ります。





せにおなりなさい


(此処を、たのしい場所にしましょう。)


fin.


***

タイトルは『11文字の伝言/SoundHorizon』の歌詞の一節より。

ラクシー・グロビュールという名前の拙宅アルセのお話。
自分の子ども達がだいすきなほわほわお姉さん。