「…どうします、先輩?」
予想以上に敵の動きが早い。四方八方囲まれて、身動き一つとれない状態だ。
苦笑気味に、けれど不敵に微笑むミズハ。背中越しにいるリヒルトも、笑った気配がした。
「俺とお前ならすることは一つじゃないか?」
「あはは、そうですよね。…攻める場所はわかってますね?」
「当然。…やられるなよ?」
「それこそ当然です。」
百戦錬磨を勝ち抜いてきた二人だからこそ。
二対の瞳が、ぎらりと光る。


「…だからさ、ちゃんと弁当作って持ってくれば混みまくった購買に挑まなくていいんじゃないの?」
「「やだ。めんどい。」」




お昼12時の購買と書いて、地獄絵図と読む。
いつ昼を食べるか自由といっても、それは空き講に恵まれたほんの一部の特権に過ぎない。大体の学生は2講があってその1時間後には3講なのだ。
昼食時間として与えられたのはこの1時間のみ。
その1時間で無事昼食を確保するために
1000を軽く超える学生達が、購買に殺到するのだから。
「…まぁ、弁当組には縁のない話だけどね。」
「ヒカトずるいッッ!!そんならなんで購買来たのよッ!」
「煙草切れたんだもん。」
「おし、ヒカトも地獄に挑むといいわ。」
「自販機めーっけ。」
「うわあああずるいいいいいっっ!!!」
例のカードも作ってあるヒカトは難なく地獄入りを免れた。
「…あ。俺も自販機でコーヒー買えるか。」
「先輩ッ!?だめですこの裏切り者ッ!!」
第二の裏切り者を阻止せんとミズハはリヒルトの腕をホールドした。普段なら指が触れただけでも赤面するのにこういう時だけ大胆である。
「本日は特価でいつも110円のたまごサンドが100円ぽっきり、しかも噂によれば栗村さんちのミルクココアプリン先行販売だそうですよ。」
「なっ、あれは10月発売じゃないのか…!?」
「…マジになるな。そしてアンタ卵もの好きだな…。」
冷静なヒカトのツっこみは届かなかった。
「よし、同盟復活ですね。手はずはいつも通りで。」
「俺が飲み物とデザートエリア。お前が食糧エリア。だな?」
「えぇ、私はいちごミルクとパンナコッタでお願いします。」
「なんかいつになく豪勢だな。」
「バイト代入りましたからね…!」
ぐっと、ミズハはガッツポーズを決めた。
「今日はワゴンセールじゃないカップ麺が買えますよ…!!」
「結局カップ麺なんだ!?」
「たまには弁当とか買ったらどうだせめて!!」
二人のツっこみは届かず、ミズハはプレーンにしようかシーフードにしようかチーズカリーにしようかなんて呟き始めていた。
なんてぐだぐだやりながら、ミズハとリヒルトは購買へと挑んでいく。

「………。」
カップ麺が主食の生活って。お気に入りのセブンスターをくわえながらヒカトは絶句した。
恋愛感情抜きにしても、一度ミズハと同居したいと本気で思う。

同居できたら今すぐその食生活叩き直せるのに。

fin.