「すきです。」

…確実にその時、せかいはとまった。



Everything you own



とりあえず目に入ったマスター・冬之<トウノ>の肩をトマは思いっきりひっつかんだ。
「うおーっと待て待て落ちつこう話し合おう俺を殺してもおいしくないぞ。」
「……。」
トウノの半冗談に返事はない。
首を傾げてトウノが振り向くと、トマはうつむいたまま顔をあげようとしなかった。手も震えている。
「…トマ?どした?」
「…トウノ…。」
「寒いか?多分服のせいだぞ?」
「いや…違…。」
震えてることを自覚したのかトマは手を離し、ぐっぱーぐっぱーしてから意を決して口を開いた。
「すきってどういう意味だ!?」
…はて、トウノは考え込む。こいつは何歳だったっけか。

聞いてやること1時間。支離滅裂な話をどうにかつなげた結果。
「つまり告白されたのか。」
真顔で言うトウノ。逆にトマがびびった。
トウノはそんなことお構いなしだが。お相手はどうやら先日対戦した相手方のムクホークらしい。ムクバードとムクホーク。問題なくタマゴも産めるいいペアじゃないか。微笑ましい話だ。
微笑ましい話、のはずなのだがトマのびびりようというかおびえようはちょっと見たことないレベルだった。
「で、なんで困ってんの?」
びくっ、とトマの肩が跳ねた。
「嫌いなの?」
ふるふる。
「かわいくないの?」
ふるふる。
「女の子は対象外?」
ぶんぶんぶんっ。
「あーよかった。じゃあなんで?」
そこでぴたりとトマは止まり、抱えていた片膝をぎゅっと抱いた。

「や、だって…そんなんわかんねぇ…"俺"を好き、って…。」
"俺"、だぜ?呟きにゆらっと揺れた愛用の大斧。
やっぱり手がかたかた震えている。両目はぼーぜんと瞠られていた。
「…すきって…どういう意味だ…?」

「………。」
トウノはなんとなーくだが状況が読めた。
そーいうことかい、こまったちゃんめ。
トウノは唐突にトマの肩を掴むと、他の手持ち達へと放り投げた。
「どわッ!?なにすんだトウノっ!」
「おーいお前ら。お前らトマのどこが好き?」
「はぁあ!?」
声を上げたのはトマ。話を振られた瑠燕・レイニー・モモはぽかんとしていた。
「ふむそうだね、やっぱり強いところではないかな。」
口火を切ったのはリーダーのポッチャマ・瑠燕だ。
「兵が強いと民も安心できるからね。僕はいつでも民第一な良き王様なのさ!」
「民って誰だ。そして誰が兵だ糞ペンギン。」
電波なので話すには根性が必要。
「そうですね、僕も戦闘中のトマ好きですよ?」
次はルクシオのレイニーだ。
「トチ狂ったトマの斧で飛び散る肉片といったら!あぁあー僕もあの肉片になれたら…v」
「お前ドМ通り越して死にたかったのか?」
イかれてるので話すには根性が必要。
「ていうかなんでお前ら総じてそこなんだよ!よりにもよって!一番おかしいとこだろそれ!」
人をぶち殺すのが好き、なんて。
常識的に考えてアウト。
「うちにじょーしきある奴なんていねーのですよ。」
最後はカラナクシのモモだ。
ちっちゃい体躯のくせに仁王立ちでトマを見上げる。
「へんてこだってお兄ですよ。お兄だったらモモは好きですよ。」
「そーゆーこった。」
ようやくトウノが会話に戻ってきた。モモをわしゃわしゃと撫でてやる。
「好きと言ったからには好きなんだろうさ。」
意味とか考えてもしょうがない、きっと無い。
その手をゆっくり離し、トマの頭へと置いた。大、丈、夫。3回ぽんぽんと置かれる手。
「応えれるなら応えてやんな。"トマホーク・カーネリアン"を好いてくれたお嬢さんにさ。」
根拠はないけど、多分大丈夫。
お嬢さんはきっと君をまるごと愛してくれる。

座っているトマは、トウノを見上げる。
ひよりと眉を八の字にして、またトマは俯いてしまった。
「トウノも…あるのか、その、」
俺の好きなとこ、的な。
トウノはこっそりと苦笑した。まだ言う気かいな、こまったちゃんめ。
「…親<オレ>の答えは、」
ひとつしかないけれど
その台詞は、まだ見ぬ彼女に譲ろう。
「お前が返事をしてきたら、教えてやるよ。」



動揺しながらも、考えさせてくれとは言えていて。
次に逢う場所も日時も、一応言うことはできていて。
意外に律儀な自分の無意識に感謝しつつ。
三日ぶりの告白現場では、同じ人が同じ瞳で待っていた。

深呼吸して、胸を押さえて、こっそりと呟いた。
むつき。
覚えた名前。今日からちゃんと、呼べるように。

「…その、こないだの返事、なんだけど…。」


fin.