「りーひるとー、さぁ早くゼミに行きますよー。」
「ぎりぎりまで行きたくないと察してください。そもそもわざわざ部室まで来るなッ!」
「少しでも早く逢いたいじゃないですか。確保の意味も込めて。」
「確保ってなんだ確保って!!」
相変わらず変態教授に愛された哀れな4年生・リヒルト。
右しかないはずのルワーレの腕は妙に長く、嫌がるリヒルトの首を簡単に絡め取ってしまった。
「確保は確保ですよ。可愛い人に限って私から逃げようとするんですから。こうもなつかないとその細い首に首輪つけたくなっちゃいますねぇ…。」
ぞわぁぁぁっ、とリヒルトの全身に鳥肌が立つ。そうなるとなかなか身体に力が入らないもので。
顔をそむけて逃れようとするくらいが関の山だった。
「…離…せ…ッ」
「…?」
あまり抵抗しないリヒルトに、ルワーレはきょとんとまばたき。
やがてその赤い両目だけで、にぃっとあくどく笑った。
「おやおや…もしかして感じてます?」
「なッ!?」
疎いリヒルトだってそのぐらいの単語はわかる。あまりの発言に目をむいた。
「きさっ…妄想もいい加減に…ッ!」
「だってほら、私が囁いただけでこんなに力抜けてますよ?貴方の身体。」
「そ、それはよくはわからんがおそらく別の理由であって!!」
「あぁ、そういえば首輪と言ったからですかね。嬉しいですねぇ…首輪お好きですか?」
「な、な…!?げ、下品な発言も大概にしろッ!!」
「ふふ…だってあんまり抵抗しないものですから。」
調子にのったルワーレは腕だけじゃ飽きたらず、指までその顎に絡めていく。

「私だって勘違いしてしまいますよ?こんな脈のある反応をされては。もっとも、貴方も勘違いなのかもしれませんけれど。」
「か…勘違い、だと…?」
「えぇ、本当はぞくぞくしてるんじゃないですか?私に甚振られることに…。」
「た、確かにぞくっというかぞわっというかはした、が…。」
「ほら。やはり身体は正直ですね。本当はそういうことお好きなんでしょう?」
「え、え…?」
「くく、安心してください。ちゃんと満たしてさしあげますから。」
「い、いやっ、俺は…っ」


ごすっっっ
袋に仕舞われたままの竹刀がルワーレの脳天に振り降ろされた。


一撃でルワーレを瀕死にし、部室にいたライラは盛大な溜息をつく。
「…簡単に騙されんなこの歴史馬鹿があああああああああッッ!!!」
「あ、あれ?俺は一体…。」
「あぁもう見ていられんッ!初歩的な誘導尋問じゃないかド阿呆ッ!騙されるな!!基本こいつのほざくことは全て戯言だッ!!」
「あ、あぁ…とりあえず助かった、恩に着る…。」
「この程度で着るな…とりあえずアンタはもう少し生きる術を身につけろ…。」
こいつ、訪問販売とかキャッチセールスとか来られたら一発でアウトなんじゃなかろうか。
あながち間違ってない想像にライラは頭が痛くなった。

fin.